2006年受信報告
(財)日本中毒情報センター
はじめに
 (財)日本中毒情報センター(以下、JPICと略す)は、1986年9月9日の中毒110番業務開始から20周年を迎え、問い合わせ件数は延べ80万件を超えた。このように多数の問い合わせに対応することができたのも、多くの方々のご支援あってのことと深く感謝する次第である。また20周年の節目にあたる2006年9月9日より、一般市民に対する情報提供料を無料化した。一般市民に対しては、10年以上にわたりNTTのダイヤルQ2システムを利用して有料で情報提供を行っていたが、ダイヤルQ2には、携帯電話、IP電話から利用できないという問題があり、携帯電話、IP電話の普及に伴ってこの利便性の問題がクローズアップされてきた。そこで、当財団の設立趣旨の原点に立ち返って更に公益性を追求するとの決意を新たにし、どこからでもかけられる固定電話に切り換え、無料化に踏み切ることにした。また、医薬品の副作用など緊急安全性情報についても、昨年5月、製薬企業の対応時間外に企業に代わって情報提供業務を開始した。
 一方、2006年も中毒関連の事件・事故が相次いだ。米国において金属製アクセサリーを誤飲した幼児が鉛中毒で死亡したことをうけて、東京都が安価な金属製アクセサリー類を調査した結果、国内でも鉛を含有する製品があることが判明し、JPICへも関連する問い合わせが増加した。また、健康情報番組が取り上げた白いんげん豆ダイエットを試した視聴者が下痢、嘔吐などを訴えた事例や、飲料への殺菌剤、鉄の微粉末などの異物混入、一酸化炭素による中毒なども、数多く報道された。JPICでは、2000年度〜2005年度まで実施していた厚生労働省の委託事業の化学災害研修「毒劇物テロ対策セミナー」を、今年度から「NBC災害・テロ対策研修」として、化学災害・テロのみならず、核物質や生物剤による災害、これら兵器を用いたテロ対策を新たに加えた研修を開始し、NBC災害・テロへ対応できる医療チームの養成に努めている。
 さて、JPICでは情報提供手段として、オペレーターによる電話応答と、タバコ専用電話(テープによる情報提供)、ファクシミリを利用した自動応答システム、インターネット、書籍、CD-ROMなどを引き続き活用している。2006年のタバコ専用応答電話の利用件数は14,738件(1日約40件)であった。賛助会員向けファクシミリ自動応答システムは、21件の利用があった。インターネットのJPICホームページへのアクセスは、一般市民向けではミラーサイトも含め約166,500件、会員向けは約8,900件であった。2006年7月より開設した企業会員向けホームページへのアクセスは約1,000件であった。JPICホームページには新聞報道などで話題となった事例関連の中毒情報をニュース欄に掲載しており、今年度も一酸化炭素やベンゼン、塩素ガスに関する情報を掲載した。
本稿の報告対象は、オペレーターによる電話応答での受信記録のみであるが、すべて昨年同様の方法で集計解析し、その結果を以下に報告する。

1. 集計方法
 集計の対象は、2006年1月1日から2006年12月31日までの1年間に受信したヒトの急性中毒に関するデータ29,789件である。受信データにはダイヤルQ2および一般市民専用電話、医療機関専用有料電話、賛助会員専用電話で受信した記録すべてが含まれる。欠損事項については、不明件数として集計対象に加算して、相対構成比を計算した。なお、対象には「タバコ専用応答電話」の利用件数14,738件は含まない(この件数を加えると2006年1年間にJPICが受信したタバコに関する問い合わせ件数は17,321件となる)。起因物質について、昨年と同様、複数物質を摂取した場合であっても、データ処理上すべて1種として記録し、集計した。
 
2. 集計内容とその結果
 
 1) 都道府県別 受信件数と連絡者のうちわけ(表1
 対人口10万比は例年と比べて全国的に大きな変動はみられなかった。また、両中毒110番の位置する関東および近畿からの問い合わせ比率は、例年同様に高かった。

2) 起因物質別 受信件数と連絡者のうちわけ(表2
 例年同様の傾向であるが、いずれの連絡者においても家庭用品に関する問い合わせが最も多かった。とくに、一般市民からの問い合わせは家庭用品が70%と圧倒的に多いが、医療機関からは家庭用品41%、医薬品37%、次いで工業用品、農業用品の順で、様々な起因物質の問い合わせがあった。

3) 患者年齢層別 受信件数と連絡者のうちわけ(表3
 全体をみると、5歳以下の乳幼児に関する問い合わせが74%を占め、対人口10万比では他の年齢層の50〜100倍に相当するという例年同様の構成比を示した。
連絡者別にみると、一般市民では5歳以下の乳幼児に関する問い合わせが88%を占め、医療機関では50%の問い合わせが20歳以上の成人であった。

4) 起因物質別 患者の性別と年齢層別 受信件数(表4
 昨年同様、5歳以下の乳幼児に関する問い合わせでは、家庭用品が81%と圧倒的に多く、次いで医薬品であったが、20歳以上の成人の問い合わせでは、農業用品が78%と多かった。

5) 発生場所別 受信件数(表5
 例年同様、88%が自宅、知人宅などの居住内で発生していた。

6) 起因物質別 受信件数(表6
 単独物質の事故が92%で、残りが複数物質の曝露であった。中には9種以上の物質の曝露による問い合わせもみられ、最大は21種の物質を曝露した問い合わせであった。

7) 患者年齢層別 受信件数と発生状況のうちわけ(表7
 各年齢層において、誤飲・誤食・誤使用などの不慮の事故が多い。特に5歳以下の乳幼児では99%以上が不慮の事故である。例年同様、年齢層が高くなると故意の事故が増加するが、65歳以上の高齢者では不慮の事故が80%と多かった。

8) 年齢層別 摂取経路別 受信件数(表8
 複数経路の場合は、各経路をそれぞれ1件として計上し、のべ件数で表示しているため、表8の合計値は他の表の合計値より多くなっている。例年同様、5歳以下の乳幼児では経口摂取が94%と多く、他の年齢層に比べると、吸入や眼の事故の占める割合が低かった。

9) 起因物質別 年齢層別 曝露から受信までの症状の有無(表9
 例年同様、13歳〜64歳の年齢層では12歳以下の小児に比べて有症状率が高かった。家庭用品以外では62〜89%に何らかの症状がみられた。

10) 起因物質分類別 受信件数上位品目
 (1)誤飲・誤食等について(表10-1
 5歳以下の乳幼児では昨年同様、化粧品が最も多く、ついでタバコ関連品であった。各起因物質分類において、上位品目となっていた起因物質の順位については多少変動があるものの、起因物質の品目については例年同様で大差はなかった。
 (2)自殺企図について(表10-2
 自殺企図では例年同様、医療用・一般用医薬品の中枢神経系用薬が8割を占め、農業用品の殺虫剤、家庭用品の洗浄剤がそれに続いている。

11) 品目別 受信件数
   (表11:家庭用品医療用医薬品一般用医薬品
        農業用品自然毒工業用品食品・その他
 大分類別に、品目別受信件数を受信件数の多い品目順に示した。全体的に大きな変動はみられなかったが、家庭用品のタバコ関連品の問い合わせ件数は年々減少しており、2006年は2,583件と、2000年(5,041件)の半数程度となっている。乱用薬物、ストリートドラッグに関する問い合わせは、昨年とほぼ同様であった。なお、一般用医薬品の一部が2004年の規制緩和措置により新範囲医薬部外品に移行されたが、本稿では従来どおり医薬品として集計した。この取り扱いに関しては、今後検討する予定である。

12) 発生時刻分布(図1
 中毒事故の発生時刻の傾向を把握する目的で作成したものである。
JPICへの問い合わせ状況からみる限りでは、事故発生は昨年同様、午前8時から午後10時の生活時間帯に多く、ピークは午前10時台と午後6時台となっている。

13) 動物の中毒に関する受信件数
 動物の急性中毒に関する問い合わせは753件であった。
 (1)起因物質別 受信件数と連絡者のうちわけ(表12-1
 (2)起因物質分類別 受信件数(表12-2
 動物では殺虫剤、乾燥剤・鮮度保持剤などの問い合わせが多かった。

 
 
おわりに
 問い合わせがあった起因物質や事故発生状況の傾向は、例年とほぼ同様の結果を示した。
前述したダイヤルQ2から一般回線への切り替えにより、9月9日〜12月31日の受信件数は前年と比べて、一般市民専用電話は7%増であった。携帯電話、IP電話、公衆電話からの受信も約2割あり、より多くの方にご利用いただけるようになった。なお、医療機関を対象とした医療情報の提供には従来どおり一件2,000円をお願いしており、誠に心苦しいところではあるが、今後もより公益性の高いサービスの提供を心がける所存であるので、皆様のご理解、ご支援をお願いしたい。
 最後に中毒110番の問い合わせ電話番号およびホームページアドレスを紹介する。
  [電話]
    ・ 一般市民専用電話 (情報提供料無料、通話料のみ)
       (大 阪) 072-727-2499
              365日  24時間対応
       (つくば) 029-852-9999
              365日  9〜21時対応

    ・ 医療機関専用有料電話 (情報提供料:1件につき2,000円)
       (大 阪) 072-726-9923
              365日  24時間対応
       (つくば) 029-851-9999 
              365日 9〜21時対応

    ・ 賛助会員専用電話 
       賛助会員(病院、企業、行政など)にのみ電話番号を通知する、年1回更新

    ・ タバコ専用電話 (情報提供料無料、通話料のみ)
            072-726-9922  
            365日  24時間対応
            (テープによる情報提供)

 ホームページ
   http://www.j-poison-ic.or.jp 
   (ミラーサイト http://wwwt.j-poison-ic.or.jp

 なお、賛助会員、ホームページ会員についての資料請求は、以下へFAXにてお申し込み下さい。
    財団法人日本中毒情報センター
     本部事務局 FAX:029-856-3533