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2011年受信報告
                        

公益財団法人 日本中毒情報センター


はじめに

 2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)が発生し、中毒と関連する事案もいくつもみられた。震災当日、東京都の工場でトリクロロエチレンを吸入して2名が死亡した事故が発生した。震災後は灯油ストーブ、木炭や練炭、発電機の使用による一酸化炭素中毒が多発し、公益財団法人日本中毒情報センター(以下JPICと略す)においても、ガスストーブを使用して患者が多発した事例、コタツの中に焚いた練炭を入れて使用し症状が出現した事例のほか、ガソリンをホース等で吸って移し替える際に誤飲する事故等を受信した。また、福島第一原子力発電所事故に関連して、インターネット情報等をもとに放射性ヨウ素による内部被爆の予防目的でヨウ素を含む殺菌消毒剤や含嗽薬を誤飲する事故の問い合わせも受信した。JPICはこれらの状況の変化を受けて、JPICのホームページを通じて震災時の一酸化炭素による中毒、ヨウ素を含む消毒剤の誤飲の情報提供を行い、注意喚起を図った。
そのほかにも化学物質に起因する中毒事件・事故が相次いだ。鳥取県の製紙工場でパイプから漏出した水酸化ナトリウムを含む溶液を従業員38名が曝露した事故、埼玉県の自治会がペットボトルに小分けした殺虫剤を周辺住民に配り、2名が誤飲して意識不明の重体になる事故、また、お香やハーブなどを謳い「合法ハーブ」と称して販売されている違法ドラッグ(いわゆる脱法ハーブ)の乱用が若年層に急増し、吸入後に1名が死亡した事件などが発生した。埼玉県の殺虫剤の事故では、厚生労働省は医薬品の飲食容器への不適切な小分け配布を行わないよう都道府県に対し文書を通知し、周知徹底を図った。
原子力発電所事故の発生や依然として厳しい状況で推移している国際テロ情勢の中、JPICは厚生労働省の委託事業「NBC災害・テロ対策研修」を昨年同様2回主催し、2006年の開始時から6年間(12回)で117医療チームの研修を終了した。
さて、JPICでは情報提供手段として、オペレーターによる電話応答と、たばこ専用応答電話(テープによる情報提供)、インターネット、書籍、CD-ROMなどを引き続き活用している。2011年のたばこ専用応答電話の利用件数は9,265件(1日約25件)である。インターネットのJPICホームページへのアクセスは、一般市民向けではミラーサイトも含め約175,900件、会員向けは約5,000件であった。企業会員向けホームページへのアクセスは約800件であった。
本稿の報告対象は、オペレーターによる電話応答での受信記録のみであるが、すべて昨年同様の方法で集計解析し、その結果を以下に報告する。


1. 集計方法

 集計の対象は、2011年1月1日から2011年12月31日までの1年間に受信したヒトの急性中毒に関するデータ36,818件である。受信データには一般市民専用電話、医療機関専用有料電話、賛助会員専用電話で受信した記録すべてが含まれる。欠損事項については、不明件数として集計対象に加算して、相対構成比を計算した。なお、対象には「たばこ専用応答電話」の利用件数9,265件は含まない(この件数を加えると2011年1年間にJPICが受信したたばこに関する問い合わせ件数は12,491件となる)。起因物質について、昨年と同様、複数物質を摂取した場合であっても、データ処理上すべて1種として記録し、集計した。

 
2. 集計内容とその結果

1) 都道府県別 受信件数と連絡者のうちわけ表1
 対人口10万比は例年と比べて全国的に大きな変動はみられなかった。また、両中毒110番の位置する関東および近畿からの問い合わせ比率は、例年同様に高かった。

2) 起因物質別 受信件数と連絡者のうちわけ表2
 問い合わせの87%が一般市民からで、医療機関からは11%であった。
 例年同様の傾向であるが、いずれの連絡者においても家庭用品に関する問い合わせが最も多かった。とくに、一般市民からの問い合わせは家庭用品が66%と圧倒的に多いが、医療機関からは家庭用品40%、医薬品38%、次いで工業用品、農業用品の順で、様々な起因物質の問い合わせがあった。

3) 患者年齢層別 受信件数と連絡者のうちわけ表3
 全体をみると、5歳以下の乳幼児に関する問い合わせが80%を占め、対人口10万比では他の年齢層の50〜100倍に相当するという例年同様の構成比を示した。
連絡者別にみると、一般市民では5歳以下の乳幼児に関する問い合わせが87%を占め、医療機関では53%の問い合わせが20歳以上の成人であった。

4) 起因物質別 患者の性別と年齢層別 受信件数表4
 昨年同様、家庭用品、医薬品については5歳以下の乳幼児に関する問い合わせが多く、それぞれ84%、80%であるが、農業用品については20歳以上の成人の問い合わせが79%と多かった。

5) 発生場所別 受信件数表5
 93%が自宅、知人宅などの居住内で発生しており、例年同様多かった。

6) 起因物質数別 受信件数表6
 単独物質の事故が93%で、残りが複数物質の曝露であった。なかには9種以上の物質の曝露による問い合わせもみられた。

7) 患者年齢層別 受信件数と発生状況のうちわけ表7
 各年齢層において、誤飲・誤食・誤使用などの不慮の事故が多い。とくに5歳以下の乳幼児では99%以上、65歳以上の高齢者では90%が不慮の事故である。例年同様、年齢層が高くなると故意の事故が増加し、13〜19歳では41%、20〜64歳では29%が故意の事故である。

8) 年齢層別 摂取経路別 受信件数表8
 複数経路の場合は、各経路をそれぞれ1件として計上し、のべ件数で表示しているため、表8の合計値は他の表の合計値より多くなっている。例年同様、5歳以下の乳幼児では経口摂取が94%と多く、他の年齢層に比べると、吸入や眼の事故の占める割合が低かった。

9) 起因物質別 年齢層別 曝露から受信までの症状の有無表9
 例年同様、13〜64歳の年齢層では12歳以下の小児に比べて有症状率が高く、家庭用品以外では62〜87%に何らかの症状がみられた。

10) 起因物質分類別 受信件数上位品目
 (1)誤飲・誤食等について表10-1
 5歳以下の乳幼児では化粧品による事故が最も多く、次いでたばこ関連品であった。各起因物質分類において、上位品目となっていた起因物質の順位については多少変動があるものの、起因物質の品目については例年同様で大差はなかった。
 (2)自殺企図について表10-2
 自殺企図では例年同様、医療用・一般用医薬品の中枢神経系用薬が全体の約半数を占め、家庭用品の洗浄剤、農業用品の殺虫剤がそれに続いている。

11) 品目別 受信件数
家庭用品医療用医薬品一般用医薬品農業用品自然毒工業用品食品、その他
 大分類別に、品目別受信件数を受信件数の多い品目順に示した。2004年の規制緩和措置により新範囲医薬部外品に移行された品目は一部を除き家庭用品として集計していたが、本稿からは、新範囲医薬部外品を含む指定医薬部外品を一般用医薬品として集計し、これらをうち件数として表示した。また、一般用医薬品ではジフェンヒドラミン塩酸塩を主薬とする催眠鎮静剤を、工業用品ではタリウムを、食品・その他ではいわゆる脱法ハーブ(Smokable herbal mixtures)を新たな品目として追加した。
全体的に大きな変動はみられなかった。家庭用品では、たばこ関連品が昨年に引き続き減少した。新しいタイプのトイレ用洗剤の登場により酸・アルカリに分類されないトイレ用洗剤の問い合わせが昨年と比べ2倍以上となった。
また、2剤の混合により発生した硫化水素の問い合わせは昨年に続き減少した。
乱用薬物,ストリートドラッグに関する問い合わせは昨年と比較して5倍以上に急増した。これは、違法ドラッグ(いわゆる脱法ハーブ)に関する問い合わせが2009年2件、2010年7件、2011年58件と増えたことによるものである。

12) 発生時刻分布図1
 中毒事故の発生時刻の傾向を把握する目的で作成したものである。
JPICへの問い合わせ状況からみる限りでは、事故発生は昨年同様、午前8時から午後9時の生活時間帯に多く、ピークは午前9時から午前10時台と午後6時台となっている。

13) 動物の中毒に関する受信件数
 動物の急性中毒に関する問い合わせは518件であった。
 (1)起因物質別 受信件数と連絡者のうちわけ表12-1
医療機関からの問い合わせは年々減少傾向にある。
 (2)起因物質分類別 受信件数上位品目表12-2
 動物では殺虫剤、中枢神経系用薬、乾燥剤・鮮度保持剤、植物などの問い合わせが多かった。


おわりに

問い合わせがあった起因物質や事故発生状況の傾向は、例年とほぼ同様の結果を示した。
JPICの活動も2011年で25周年を迎え、その節目の年の3月に東日本大震災が発生し多くの被害を日本にもたらした。茨城県に所在するつくば中毒110番も被害を受け、業務の一時停止を余儀なくされたが、大阪中毒110番において通常どおり業務を継続することができた。中毒情報を提供する日本唯一の専門機関である中毒情報センターは、災害・テロ発災時においても業務の継続が求められるが、中毒110番が国内に2ヵ所あることの有用性が阪神淡路大震災の時と同様に示された。
JPICは本年4月1日から手続きを経て、公益財団法人に移行した。JPICはこれまでも、急性中毒について、その治療に必要な情報の収集と整備、問い合わせに対する情報提供などを行い、我が国の医療の向上のために活動してきたが、これからも公益財団法人としてその責任を果たしていきたい。
最後に中毒110番の問い合わせ電話番号およびホームページアドレスを紹介する。
  [電話]
    ・ 一般市民専用電話 (情報提供料無料、通話料のみ)
       (大 阪) 072-727-2499
             365日  24時間対応
       (つくば) 029-852-9999
             365日  9〜21時対応

    ・ 医療機関専用有料電話 (情報提供料:1件につき2,000円)
       (大 阪) 072-726-9923
             365日  24時間対応
       (つくば) 029-851-9999
             365日  9〜21時対応

    ・ 賛助会員専用電話 
       賛助会員(医療従事者、医療機関、行政など)にのみ電話番号を通知する、年1回更新

    ・ たばこ専用応答電話 (情報提供料無料、通話料のみ)
            072-726-9922
            365日  24時間対応
            (テープによる情報提供)

 [ホームページ]
   http://www.j-poison-ic.or.jp 
   (ミラーサイト http://wwwt.j-poison-ic.or.jp

 なお、賛助会員、ホームページ会員についての資料請求は、以下へFAXにてお申し込み下さい。
    公益財団法人 日本中毒情報センター
     本部事務局 FAX:029-856-3533

 
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