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2015年受信報告

公益財団法人 日本中毒情報センター


はじめに
2015年は青森県の養豚場のふん尿処理施設で発生した硫化水素が原因とみられ1名が亡くなる事故、三重県のコンビナートにある化学工場で塩素ガスが漏れ作業員8名が病院に搬送された事故、山形県の小学校で酸性の凝集剤と塩素系消毒剤を誤って混合し発生した塩素ガスを2名が吸入して入院した事故が発生し、化学物質による中毒事故が相次いだ。日本中毒情報センター(以下JPICと略す)ではホームページによる情報発信を行い、迅速に対応した。
昨年と同様に、厚生労働省の委託事業「NBC災害・テロ対策研修」も2回主催し、2006年の開始時から10年間(21回)で247医療チーム、1,228名の研修を終了した。
2009年にJPICと日本中毒学会が連名で厚生労働省に対し、医療上必要性が高い国内未承認解毒薬・拮抗薬の早期承認を求める要望書を提出していたホメピゾール、メチレンブルーはそれぞれ2015年1月、3月に販売が開始され、医療現場等で迅速に使用できる体制が実現できるようになった。
さて、JPICでは情報提供手段として、オペレーターによる電話応答と、たばこ専用応答電話(テープによる情報提供)、インターネット、書籍、CD-ROMなどを引き続き活用している。2015年のたばこ専用応答電話の利用件数は5,757件(1日約16件)であった。インターネットのJPICホームページへのアクセスは、一般市民向けではミラーサイトも含め約264,000件を数えた。会員向けホームページへのアクセスは約5,300件、企業会員向けは約2,300件であった。
本稿の報告対象は、オペレーターによる電話応答での受信記録のみであるが、すべて昨年同様の方法で集計解析し、その結果を以下に報告する。

1. 集計方法

 集計の対象は、2015年1月1日から2015年12月31日までの1年間に受信したヒトの急性中毒に関するデータ35,153件である。受信データには一般市民専用電話、医療機関専用有料電話、賛助会員専用電話で受信した記録すべてが含まれる。欠損事項については、不明件数として集計対象に加算して、相対構成比を計算した。なお、対象には「たばこ専用応答電話」の利用件数5,757件は含まない(この件数を加えると2015年1年間にJPICが受信したたばこに関する問い合わせ件数は8,443件となる)。起因物質について、昨年と同様、複数物質を摂取した場合であっても、データ処理上すべて1種として記録し、集計した。また、ペットなどの動物による急性中毒事故に関する問い合わせは441件であり、別途集計した。

2. 集計内容とその結果

1) 都道府県別 受信件数と連絡者のうちわけ(表1)
 対人口10万比は例年と比べて全国的に大きな変動はみられなかった。また、大阪およびつくば中毒110番の位置する近畿および関東からの問い合わせ比率は、例年同様に高かった。

2) 起因物質別 受信件数と連絡者のうちわけ(表2)
 問い合わせの89%が一般市民からで、医療機関からは9%であった。
 例年同様の傾向であるが、いずれの連絡者においても家庭用品に関する問い合わせが最も多く59%であった。問い合わせ全体に占める割合が一昨年初めて3割を超えた医薬品は昨年と同様32%であった。

3) 患者年齢層別 受信件数と連絡者のうちわけ(表3
 全体をみると、5歳以下の乳幼児に関する問い合わせが78%を占め、対人口10万比では他の年齢層の50〜100倍に相当するという例年同様の構成比を示した。
連絡者別にみると、一般市民では5歳以下の乳幼児に関する問い合わせが83%を占め、医療機関では51%の問い合わせが20歳以上の成人であった。その他(高齢者施設、薬局、学校、保健所、消防など)では65歳以上の高齢者が44%であった。

4) 起因物質別 患者の性別と年齢層別 受信件数(表4
 患者の性別については家庭用品、医療用医薬品、一般用医薬品において20歳以上の成人で男性より女性が多く昨年同様の傾向を示した。年齢層別では、家庭用品、医療用医薬品、一般用医薬品については5歳以下の乳幼児に関する問い合わせが多く、いずれも80%程度であるが、農業用品については20歳以上の成人の問い合わせが76%と多かった。

5) 発生場所別 受信件数(表5
 91%が自宅、知人宅などの居住内で発生しており、例年同様多かった。

6) 起因物質数別 受信件数(表6
 単独物質の事故が93%で、残りが複数物質の曝露であった。なかには9種以上の物質の曝露による問い合わせもみられ、最大は19種の物質を曝露した問い合わせであった。

7) 患者年齢層別 受信件数と発生状況のうちわけ(表7
 各年齢層において、誤飲・誤食・誤使用などの不慮の事故が多い。とくに5歳以下の乳幼児ではほぼ100%、65歳以上の高齢者では92%が不慮の事故である。

8) 年齢層別 摂取経路別 受信件数(表8
 複数経路の場合は、各経路をそれぞれ1件として計上し、のべ件数で表示しているため、表8の合計値は他の表の合計値より多くなっている。例年同様、5歳以下の乳幼児では経口摂取が90%と多く、他の年齢層に比べると、吸入や眼の事故の占める割合が低かった。

9) 起因物質別 年齢層別 曝露から受信までの症状の有無(表9
 すべての起因物質において、5歳以下の乳幼児の有症状率は3割未満であったが、20歳以上の成人では5割を超えていた。

10) 起因物質分類別 受信件数上位品目
 (1)誤飲・誤食等について(表10-1
 5歳以下の乳幼児において、家庭用品では化粧品による事故が最も多く、次いでたばこ関連品であった。医療用医薬品では外皮用薬、一般用医薬品では中枢神経系用薬が最も多かった。そのほかの各起因物質分類において、上位品目となっていた起因物質の順位については多少変動があるものの、起因物質の品目については例年同様で大差はなかった。
 (2)自殺企図について(表10-2)
 自殺企図では例年同様、医療用・一般用医薬品の中枢神経系用薬が全体の約半数を占め、家庭用品の洗浄剤、農業用品の殺虫剤がそれに続いている。

11) 品目別 受信件数
家庭用品医療用医薬品一般用医薬品農業用品自然毒工業用品食品、その他
 大分類別に、品目別受信件数を受信件数の多い品目順に示した。家庭用品は殺虫剤のピレスロイド含有殺虫剤のうちワンプッシュ式製品は昨年の152件から175件に増加した。家庭用品の洗浄剤では衣料用洗剤が昨年の491件から582件に増加し、うちパック型洗剤は昨年の134件から214件に増加した。防水加工剤は昨年に引き続き52件から69件に増加した。また、食品、その他で乱用薬物、ストリートドラッグのうち危険ドラッグ(Smokable herbal mixtures)は、昨年の26件から3件に減少した。大幅に減少した理由として、規制が強化されたことが考えられる。

12) 発生時刻分布(図1
 中毒事故の発生時刻の傾向を把握する目的で作成したものである。
JPICへの問い合わせ状況からみる限りでは、事故発生は例年同様、午前7時から午後10時の生活時間帯に多く、ピークは午前9時から午前10時台と午後6時から午後7時台となっている。

13) 動物の中毒に関する受信件数
 動物の急性中毒に関する問い合わせは441件であった。
 (1)起因物質別 受信件数と連絡者のうちわけ(表12-1
 一般市民からの問い合わせが昨年の217件から261件に増加した。
 (2)起因物質分類別 受信件数上位品目(表12-2
 動物では殺虫剤、植物、乾燥剤・鮮度保持剤、中枢神経系用薬などの問い合わせが多かった。

おわりに
問い合わせがあった起因物質や事故発生状況の傾向は、全体としては例年とほぼ同様の結果を示した。
新しい剤型である洗濯用のパック型洗剤については、昨年以上の問い合わせがあり、注意喚起がされているにも関わらず事故が発生している。そのため、JPICでは、製造事業者と連携をさらに強化して事故情報を共有し、今後も行政や製造・販売業者と情報交換しながら、消費生活用製品に関する事故情報を収集し、中毒事故発生防止の啓発に努めたい。2015年12月に消費者安全委員会が子どもによる医薬品の誤飲事故に係る事故等原因調査報告書を公表している。この調査はJPICの協力のもと行われており、JPICが収集したデータが活用されている。
2016年5月には伊勢志摩サミットが開催された。化学テロや大規模化学災害が発生した際、JPICから関係機関に対して迅速かつ適切な情報提供を行う体制をよりいっそう強化したい。
また、JPICは、2016年9月に設立30周年を迎える。一般市民および医療従事者等関係者に役立つ急性中毒に関する情報提供と啓発・教育活動を引き続き実施していきたい。また、新たな情報発信のツールとしてTwitterを開始した。中毒110番体験研修は後期臨床研修医や薬剤師を含む医療従事者を対象として今後も引き続き実施する予定であり、是非、多くの先生方にご参加をお願いしたい(研修内容、申込先等の詳細についてはホームページを参照)。
最後に中毒110番の問い合わせ電話番号およびホームページ、Twitterアドレスを紹介する。




  [電話]
    ・ 一般市民専用電話 (情報提供料無料、通話料のみ)
       (大 阪) 072-727-2499
             365日  24時間対応
       (つくば) 029-852-9999
             365日  9〜21時対応

    ・ 医療機関専用有料電話 (情報提供料:1件につき2,000円)
       (大 阪) 072-726-9923
             365日  24時間対応
       (つくば) 029-851-9999
             365日  9〜21時対応

    ・ 賛助会員専用電話 
       賛助会員(医療従事者、医療機関、行政など)にのみ電話番号を通知する、年1回更新

    ・ たばこ専用応答電話 (情報提供料無料、通話料のみ)
            072-726-9922
            365日  24時間対応
            (テープによる情報提供)

  [ホームページ・Twitter]
   http://www.j-poison-ic.or.jp 
   (ミラーサイト http://wwwt.j-poison-ic.or.jp
   Twitter:https://twitter.com/JPIC_Poisoninfo

 なお、賛助会員、ホームページ会員についての資料請求は、以下へお申し込み下さい。
    公益財団法人 日本中毒情報センター
     本部事務局 FAX:029-856-3533
           E-mail:head-jpic@j-poison-ic.or.jp

 
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