2008年受信報告
(財)日本中毒情報センター


はじめに

 2008年は中毒事件・事故が相次いだ年であった。硫黄含有製品とトイレ用酸性洗浄剤の混合により発生させた硫化水素による自殺が多発し、救助者や近隣住民にも被害が及ぶなど社会的に大きな問題となった。また、後の調査でメタミドホスの混入が判明した中国産冷凍ギョウザによる中毒事件、中国における牛乳へのメラミン混入事案などの報道が相次いだ。これら中毒事例に関して(財)日本中毒情報センター(JPIC)に多くの問い合わせがあり、JPICにおいては関係機関と連携し、事故防止の啓発に努めた。
 7月に開催された北海道洞爺湖サミットにおいて、JPICは厚生労働省をはじめ関係機関と連携し救急医療対応体制における医療対策本部NBC対応班の化学災害専門家として開催期間中従事した。また、3年目となる厚生労働省の委託事業「NBC災害・テロ対策研修」を2回主催し、サミット直前の6月には札幌で開催し救急医療従事者のNBC災害・テロへの対応強化を図った。
 メーカーに重大製品事故発生の収集・報告義務等を課した改正消費生活用製品安全法が施行(2007年5月)されたことを受けて、JPICでは、把握した製品事故情報をメーカー側に速やかに報告するサービスを5月より開始した。これにより消費生活用製品の安全管理等に貢献できるものと期待する。
 また、厚生労働科学研究の一環として家庭用化学製品による中毒事故防止のための一般市民向け啓発教材を作成した。中毒事故防止ツールとして広く利用いただき事故減少につなげたい。
 さて、JPICでは情報提供手段として、オペレーターによる電話応答と、タバコ専用応答電話(テープによる情報提供)、ファクシミリを利用した自動応答システム、インターネット、書籍、CD-ROMなどを引き続き活用している。2008年のタバコ専用応答電話の利用件数は16,602件(1日約45件)で、賛助会員向けファクシミリ自動応答システムの利用件数は、18件であった。インターネットのJPICホームページへのアクセスは、一般市民向けではミラーサイトも含め約190,400件、会員向けは約8,800件であった。企業会員向けホームページへのアクセスは約1,100件であった。JPICホームページには、国内外で発生した化学災害のうち、新聞報道などで話題となった内容についてニュース欄に原因物質などの情報を積極的に掲載した。
 本稿の報告対象は、オペレーターによる電話応答での受信記録のみであるが、すべて昨年同様の方法で集計解析し、その結果を以下に報告する。

1. 集計方法

 集計の対象は、2008年1月1日から2008年12月31日までの1年間に受信したヒトの急性中毒に関するデータ36,044件である。受信データには一般市民専用電話、医療機関専用有料電話、賛助会員専用電話で受信した記録すべてが含まれる。欠損事項については、不明件数として集計対象に加算して、相対構成比を計算した。なお、対象には「タバコ専用応答電話」の利用件数16,602件は含まない(この件数を加えると2008年1年間にJPICが受信したタバコに関する問い合わせ件数は20,231件となる)。起因物質については、昨年と同様、複数物質を摂取した場合であっても、データ処理上すべて1種として記録し、集計した。
 
2. 集計内容とその結果

1) 都道府県別 受信件数と連絡者のうちわけ(表1
 対人口10万比は例年と比べて全国的に大きな変動はみられなかった。また、両中毒110番の位置する関東および近畿からの問い合わせ比率は、例年同様に高かった。

2) 起因物質別 受信件数と連絡者のうちわけ(表2
 例年同様の傾向であるが、いずれの連絡者においても家庭用品に関する問い合わせが最も多かった。とくに、一般市民からの問い合わせは家庭用品が69%と圧倒的に多いが、医療機関からは家庭用品42%、医薬品35%、次いで農業用品、工業用品の順で、様々な起因物質の問い合わせがあった。

3) 患者年齢層別 受信件数と連絡者のうちわけ(表3
 全体をみると、5歳以下の乳幼児に関する問い合わせが77%を占め、対人口10万比では他の年齢層の50〜100倍に相当するという例年同様の構成比を示した。
連絡者別にみると、一般市民では5歳以下の乳幼児に関する問い合わせが87%を占め、医療機関では54%の問い合わせが20歳以上の成人であった。

4) 起因物質別 患者の性別と年齢層別 受信件数(表4
 昨年同様、家庭用品、医薬品については5歳以下の乳幼児に関する問い合わせが多く、それぞれ83%、74%であるが、農業用品については20歳以上の成人の問い合わせが76%と多かった。

5) 発生場所別 受信件数(表5
 例年同様、91%が自宅、知人宅などの居住内で発生していた。

6) 起因物質数別 受信件数(表6
 単独物質の事故が93%で、残りが複数物質の曝露であった。なかには9種以上の物質の曝露による問い合わせもみられ、最大は15種の物質を曝露した問い合わせであった。

7) 患者年齢層別 受信件数と発生状況のうちわけ(表7
 各年齢層において、誤飲・誤食・誤使用などの不慮の事故が多い。特に5歳以下の乳幼児では99%以上が不慮の事故である。例年同様、年齢層が高くなると故意の事故が増加し、13〜19歳では46%、20〜64歳では33%が故意の事故であるが、65歳以上の高齢者では不慮の事故が85%と多かった。

8) 年齢層別 摂取経路別 受信件数(表8
 複数経路の場合は、各経路をそれぞれ1件として計上し、のべ件数で表示しているため、表8の合計値は他の表の合計値より多くなっている。例年同様、5歳以下の乳幼児では経口摂取が94%と多く、他の年齢層に比べると、吸入や眼の事故の占める割合が低かった。

9) 起因物質別 年齢層別 曝露から受信までの症状の有無(表9
 例年同様、13〜64歳の年齢層では12歳以下の小児に比べて有症状率が高く、家庭用品以外では64〜92%に何らかの症状がみられた。

10) 起因物質分類別 受信件数上位品目
 (1)誤飲・誤食等について(表10-1
 5歳以下の乳幼児では昨年同様、化粧品が最も多く、ついでタバコ関連品であった。各起因物質分類において、上位品目となっていた起因物質の順位については多少変動があるものの、起因物質の品目については例年同様で大差はなかった。
 (2)自殺企図について(表10-2
 自殺企図では例年同様、医療用・一般用医薬品の中枢神経系用薬が全体の約半数を占め、家庭用品の洗浄剤、農業用品の殺虫剤がそれに続いている。

11) 品目別 受信件数(表11)
家庭用品医療用医薬品一般用医薬品農業用品自然毒工業用品食品、その他
 大分類別に、品目別受信件数を受信件数の多い品目順に示した。全体的に大きな変動はみられなかった。
 本稿より、薬剤の混合により発生した塩素ガス、硫化水素について、それぞれ塩素系薬剤または硫黄含有製品として集計し、ガス発生事例をうち件数として表示した。
 中国産冷凍ギョウザに関する問い合わせを家庭用品の有機リン含有殺虫剤に集計したため、この項の件数が例年より増加した。また、工業用品において混合により発生した硫化水素に関する問い合わせが急増しているが、硫黄含有製品の詳細が判明していないものをこれに集計したためである。さらに、近年、殺虫成分非含有の虫よけ芳香剤が登場し、忌避剤、誘引剤の問い合わせが増加した。その他、医療用医薬品ではアレルギー用薬、自然毒では観葉植物に多いシュウ酸塩含有植物が増加した。また、昨年減少した乱用薬物、ストリートドラッグに関する問い合わせが再び増加した。
 なお、一般用医薬品の一部が2004年の規制緩和措置により新範囲医薬部外品に移行されたが、本稿では従来どおり医薬品として集計した。今後の取り扱いに関しては、現在検討中である。

12) 発生時刻分布(図1
 中毒事故の発生時刻の傾向を把握する目的で作成したものである。
 JPICへの問い合わせ状況からみる限りでは、事故発生は昨年同様、午前8時から午後9時の生活時間帯に多く、ピークは午前10時台と午後6時台となっている。

13) 動物の中毒に関する受信件数
 動物の急性中毒に関する問い合わせは583件であった。
 (1)起因物質別 受信件数と連絡者のうちわけ(表12-1
 医療機関からの問い合わせは年々減少傾向にある。
 (2)起因物質分類別 受信件数上位品目(表12-2
 動物では殺虫剤、植物、乾燥剤・鮮度保持剤などの問い合わせが多かった。

おわりに

 問い合わせがあった起因物質や事故発生状況の傾向は、例年とほぼ同様の結果を示した。2006年9月の一般市民に対する情報提供料無料化以降、一般市民専用電話への問い合わせ件数は年々増加傾向(前年度比10%増)にある。また、中毒110番業務はもとより、2006年より開始した医薬品による副作用など緊急の安全性に関する情報提供や2008年より開始した消費生活用製品による重大事故に関する情報提供を迅速かつ充実した内容で実施できるようさらに体制の強化を図りたい。
 最後に中毒110番の問い合わせ電話番号およびホームページアドレスを紹介する。
  [電話]
    ・ 一般市民専用電話 (情報提供料無料、通話料のみ)
       (大 阪) 072-727-2499
             365日  24時間対応
       (つくば) 029-852-9999
             365日  9〜21時対応

    ・ 医療機関専用有料電話 (情報提供料:1件につき2,000円)
       (大 阪) 072-726-9923
             365日  24時間対応
       (つくば) 029-851-9999
             365日  9〜21時対応

    ・ 賛助会員専用電話 
       賛助会員(医療機関、行政など)にのみ電話番号を通知する、年1回更新

    ・ タバコ専用応答電話 (情報提供料無料、通話料のみ)
            072-726-9922
            365日  24時間対応
            (テープによる情報提供)

  [ホームページ]
    http://www.j-poison-ic.or.jp 
    (ミラーサイト http://wwwt.j-poison-ic.or.jp

 なお、賛助会員、ホームページ会員についての資料請求は、以下へFAXにてお申し込み下さい。
    財団法人日本中毒情報センター
     本部事務局 FAX:029-856-3533