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2014年受信報告

公益財団法人 日本中毒情報センター


はじめに
2014年は食品への異物混入に関する報道が相次いだ年であった。化学物質の混入では、201312月末に発覚した冷凍食品へのマラチオン混入事件について、公益財団法人日本中毒情報センター(以下JPICと略す)では20142月末までに約70件の問い合わせを受信した。そのほか、7月に広島県の工場で硫化水素とみられるガスが発生し作業員7名が病院へ搬送された事故、8月に福島県および12月に茨城県の工場で塩素ガスが漏れ、近くの会社従業員それぞれ10名、5名が病院へ搬送された事故などが発生し、JPICではホームページによる情報発信を行い、迅速に対応した。
また、消費者庁から委託を受けてJPIC2013年に調査協力を行った「子どもによる医薬品誤飲事故」に係る事故等原因調査の経過報告(消費者安全調査委員会)が20141219日に公表され、近年増加傾向にある子どもの医薬品の誤飲事故防止に関する啓発がなされた。昨年と同様に、厚生労働省の委託事業「NBC災害・テロ対策研修」も2回主催し、2006年の開始時から9年間(19回)で217医療チーム、1,078名の研修を終了した。
さて、JPICでは情報提供手段として、オペレーターによる電話応答と、たばこ専用応答電話(テープによる情報提供)、インターネット、書籍、CD-ROMなどを引き続き活用している。2014年のたばこ専用応答電話の利用件数は5,539(1日約15)であった。インターネットのJPICホームページへのアクセスは、一般市民向けではミラーサイトも含め約177,000件を数えた。会員向けホームページへのアクセスは約7,000件、企業会員向けは約2,100件であった。
本稿の報告対象は、オペレーターによる電話応答での受信記録のみであるが、すべて昨年同様の方法で集計解析し、その結果を以下に報告する。

1. 集計方法

 集計の対象は、201411日から20141231日までの1年間に受信したヒトの急性中毒に関するデータ33,117件である。受信データには一般市民専用電話、医療機関専用有料電話、賛助会員専用電話で受信した記録すべてが含まれる。欠損事項については、不明件数として集計対象に加算して、相対構成比を計算した。なお、対象には「たばこ専用応答電話」の利用件数5,539件は含まない(この件数を加えると20141年間にJPICが受信したたばこに関する問い合わせ件数は7,945件となる)。起因物質について、昨年と同様、複数物質を摂取した場合であっても、データ処理上すべて1種として記録し、集計した。また、ペットなどの動物による急性中毒事故に関する問い合わせは393件であり、別途集計した。

2. 集計内容とその結果

1) 都道府県別 受信件数と連絡者のうちわけ(表1)
 対人口10万比は例年と比べて全国的に大きな変動はみられなかった。また、大阪およびつくば中毒110番の位置する近畿および関東からの問い合わせ比率は、例年同様に高かった。

2) 起因物質別 受信件数と連絡者のうちわけ(表2)
 問い合わせの88%が一般市民からで、医療機関からは9%であった。
 例年同様の傾向であるが、いずれの連絡者においても家庭用品に関する問い合わせが最も多かった。問い合わせ全体に占める医薬品の割合は年々増加傾向にあり32%であった。

3) 患者年齢層別 受信件数と連絡者のうちわけ(表3
 全体をみると、5歳以下の乳幼児に関する問い合わせが78%を占め、対人口10万比では他の年齢層の50100倍に相当するという例年同様の構成比を示した。
連絡者別にみると、一般市民では5歳以下の乳幼児に関する問い合わせが84%を占め、医療機関では53%の問い合わせが20歳以上の成人あった。その他(高齢者施設、薬局、学校、保健所、消防など)では65歳以上の高齢者が43%であった。

4) 起因物質別 患者の性別と年齢層別 受信件数(表4
 患者の性別は、家庭用品、医療用医薬品、一般用医薬品において20歳以上の成人で男性より女性が多かった。年齢層別では、家庭用品、医療用医薬品、一般用医薬品については5歳以下の乳幼児に関する問い合わせが多く、いずれも80%程度であるが、農業用品については20歳以上の成人の問い合わせが80%と多かった。

5) 発生場所別 受信件数(表5
 91%が自宅、知人宅などの居住内で発生しており、例年同様多かった。

6) 起因物質数別 受信件数(表6
 単独物質の事故が93%で、残りが複数物質の曝露であった。なかには9種以上の物質の曝露による問い合わせもみられ、最大は20種の物質を曝露した問い合わせであった。

7) 患者年齢層別 受信件数と発生状況のうちわけ(表7
 各年齢層において、誤飲・誤食・誤使用などの不慮の事故が多い。とくに5歳以下の乳幼児ではほぼ100%65歳以上の高齢者では91%が不慮の事故である。

8) 年齢層別 摂取経路別 受信件数(表8
 複数経路の場合は、各経路をそれぞれ1件として計上し、のべ件数で表示しているため、表8の合計値は他の表の合計値より多くなっている。例年同様、5歳以下の乳幼児では経口摂取が91%と多く、他の年齢層に比べると、吸入や眼の事故の占める割合が低かった。

9) 起因物質別 年齢層別 曝露から受信までの症状の有無(表9
 すべての起因物質において、5歳以下の小児の有症状率は3割未満であったが、20歳以上の成人では5割を超えていた。

10) 起因物質分類別 受信件数上位品目
 (1)誤飲・誤食等について(表10-1
 5歳以下の乳幼児では、家庭用品では化粧品による事故が最も多く、次いでたばこ関連品であった。医療用医薬品では外皮用薬、一般用医薬品では中枢神経系用薬が最も多かった。そのほかの各起因物質分類において、上位品目となっていた起因物質の順位については多少変動があるものの、起因物質の品目については例年同様で大差はなかった。
 (2)自殺企図について(表10-2
 自殺企図では例年同様、医療用・一般用医薬品の中枢神経系用薬が全体の約半数を占め、家庭用品の洗浄剤、農業用品の殺虫剤がそれに続いている。

11) 品目別 受信件数
家庭用品医療用医薬品一般用医薬品農業用品自然毒工業用品食品、その他
 大分類別に、品目別受信件数を受信件数の多い品目順に示した。受信件数が増加傾向にあるため新たな品目として追加したのは、家庭用品は殺虫剤のピレスロイド含有殺虫剤のうちワンプッシュ式製品、医薬品は血圧降下剤のアンギオテンシンU受容体拮抗剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、カルシウム拮抗剤、アレルギー用薬のロイコトリエン受容体拮抗剤である。また、食品、その他で乱用薬物、ストリートドラッグのいわゆる脱法ハーブ(Smokable herbal mixtures)は危険ドラッグ(Smokable herbal mixtures)へ品目名を変更した。
家庭用品の洗浄剤では衣料用洗剤が昨年の380件から491件に増加し、うち134件が2014年4月に国内で新たな剤型として登場したパック型洗剤であった。トイレ用では便器の内側に薬剤を貼り付けるタイプを含む酸・アルカリに分類されないトイレ用洗剤が昨年の286件から356件へ増加した。そのほか、防水加工剤が昨年の35件から52件へ増加した。一方、乱用薬物、ストリートドラッグのうち危険ドラッグ(Smokable herbal mixtures)は昨年の38件から26件へ減少した。そのほかの項目については大きな変動はみられなかった。

12) 発生時刻分布(図1
 中毒事故の発生時刻の傾向を把握する目的で作成したものである。
JPICへの問い合わせ状況からみる限りでは、事故発生は例年同様、午前8時から午後10時の生活時間帯に多く、ピークは午前9時から午前10時台と午後6時から午後7時台となっている。

13) 動物の中毒に関する受信件数
 動物の急性中毒に関する問い合わせは393件であった。
 (1)起因物質別 受信件数と連絡者のうちわけ(表12-1
医療機関からの問い合わせは年々減少傾向にある。
 (2)起因物質分類別 受信件数上位品目(表12-2
 動物では殺虫剤、中枢神経系用薬、植物、乾燥剤・鮮度保持剤などの問い合わせが多かった。

おわりに
問い合わせがあった起因物質や事故発生状況の傾向は、全体としては例年とほぼ同様の結果を示した。
新しい剤型である洗濯用のパック型洗剤については、海外での事故発生状況を鑑みて、製造事業者と発売前から準備をしたうえで対応を開始したところ、発売直後から問い合わせがあった。子どもや高齢者の誤飲事故のほか、眼に入る事故が発生し、なかには入院例や眼科の通院例もあった。そのため、JPICでは、製造事業者と連携を強化して事故情報を共有し、ホームページ等で中毒事故の対応と予防に関する情報を発信して事故防止のための啓発に注力した。今後も行政や製造・販売業者と情報交換しながら、消費生活用製品に関する事故情報を収集し、中毒事故発生防止の啓発に努めたい。
20147月、厚生労働省厚生科学審議会健康危機管理部会より、「化学テロリズム対策についての提言」が公表され、化学テロに対して適切な医療提供体制を確保するための方策が示された。化学テロや大規模化学災害が発生した際、JPICから関係機関に対して迅速かつ適切な情報提供を行う体制をより一層強化したい。
中毒110番体験研修は後期臨床研修医や薬剤師を含む医療従事者を対象として今後も引き続き実施する予定であり、是非、多くの先生方にご参加をお願いしたい(研修内容、申込先等の詳細についてはホームページを参照)。
最後に中毒110番の問い合わせ電話番号およびホームページアドレスを紹介する。




  [電話]
    ・ 一般市民専用電話 (情報提供料無料、通話料のみ)
       (大 阪) 072-727-2499
             365日  24時間対応
       (つくば) 029-852-9999
             365日  9〜21時対応

    ・ 医療機関専用有料電話 (情報提供料:1件につき2,000円)
       (大 阪) 072-726-9923
             365日  24時間対応
       (つくば) 029-851-9999
             365日  9〜21時対応

    ・ 賛助会員専用電話 
       賛助会員(医療従事者、医療機関、行政など)にのみ電話番号を通知する、年1回更新

    ・ たばこ専用応答電話 (情報提供料無料、通話料のみ)
            072-726-9922
            365日  24時間対応
            (テープによる情報提供)

 [ホームページ]
   http://www.j-poison-ic.or.jp 
   (ミラーサイト http://wwwt.j-poison-ic.or.jp

 なお、賛助会員、ホームページ会員についての資料請求は、以下へFAXにてお申し込み下さい。
    公益財団法人 日本中毒情報センター
     本部事務局 FAX:029-856-3533

 
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